たけじいの残日雑記懐古控

「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」・日記風備忘雑記懐古録

藤原緋沙子著 「百年桜」

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「百年桜」(新潮社)を読み終えた。
本書には、「百年桜」、「葭切(よしきり)」、「山の宿」、「初雪」、「海霧」の短編時代小説5篇が収録されている
いずれも、江戸の下町、隅田川の近くが舞台で、江戸の町人の人情味が溢れている作品である。

 


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、ブログ・カテゴリー 「読書備忘録」に 書き留め置くことにしている。



「百年桜」(表題作)
◯主な登場人物
 新兵衛(呉服問屋「大津屋」手代、常吉、利左右衛門(呉服問屋「大津屋」番頭)
 伊助(新兵衛の幼馴染、木綿問屋「浜中屋」手代、清治、與之助)、綱五郎、ぼたん、
 銀蔵(岡っ引き)、神保喜八郎(北町奉行所定町廻り同心)、
◯あらすじ等
 12歳で奉公した「大和屋」で苦節15年、やっと手代小頭に昇進出来る日が
 近づいていた新兵衛だったが、ある日、店に2人組の賊の押し込みが有り、賊の
 一人の目を見て新兵衛は凍り付いた。故郷近江蒲生の百年桜の下で、永久の友情を
 誓い合った幼馴染の伊助ではないか?、疑念を抱きはじめ、探索を始めるが・・。

   新兵衛は、こみ上げるものを飲み込んだ。
   ・・・・悔いはない。小頭がなんだ。
   歯を食いしばって、迫る闇に視線を投げた。

   「旦那、ご覧なさいやし、みごとですぜ。この刻限に見る桜は・・・」
   新兵衛の目には、それが蒲生の百年桜に見えていた。

「葭切(よしきり)
◯主な登場人物
 大和屋忠兵衛・おりつ・房次郎・おらん・おゆき、
 伊勢屋信太郎、
 啓之助、時江、松尾託間、工藤猪十郎、
◯あらすじ等
 茶道具屋「大和屋」の娘おゆき(22歳)は、親が決めた婚礼が迫っていたが、
 1年に1度しか会えない啓之助への想いが有り、揺れていた。

 やっと再会出来た啓之助は、山流し(甲府勤番)へ旅立つという。
 どうする、おゆき、・・・。
   見詰め合う二人の耳に葭切の声が聞こえてきた。
   ギョ、ギョシ、ギョ、ギョシ・・・・、
   おゆきにはその鳴き声が、二人を見送る喜びの声のように聞こえた。

「山の宿」
◯主な登場人物
 おまき、万平、
 奥井継之進、安西吉之助、矢崎大三郎、砥部左馬助(とべさまのすけ)
 奥井盛之助・理恵、奥井孫右衛門、
◯あらすじ等
 奥井継之進は、出羽国里見藩の勘定組頭奥井孫右衛門の次男、部屋住み、冷や飯食
 いの悲哀を一身に纏い、上意討ちを果たすが、国元を出奔。
 江戸から、その継之進死去の知らせを受けた奥井家は、表沙汰には出来ず、かって
 奥井家で継之進に愛された、元女中のおまきに、遺品引き取りを頼むことになった
 が・・・。
 「山の宿の渡し」を渡り、江戸の地を踏んだおまきは、継之進の死の謎を知ることに
 なる。

   継之進さまの使命とは。もしや・・・・、
   と見返したおまきに、吉之助はきっぱりと言った。
   「天誅だな、俺はそう思っている」
   継之進さま、一緒に帰りましょうね。おまきは、船が着くのをじっと待った。

「初雪」
◯主な登場人物
 秀治、おかよ、
 与兵衛、おかじ、茂兵衛、佐多蔵、惣二郎、
 山城屋藤兵衛、徳兵衛、
 万次郎、
 宇野吉(益子屋手代)
◯あらすじ等
 
甲州勝沼からブドウを運んできた秀治という若者母親探しが描かれている。
 秀治が子供のころ、生活のために身を売り、家を出てしまった母親を、
 父親与兵衛の遺言に従って、探しあ
てるが・・・。
   「おふくろ、今日の渡しは、富士の初雪が見えるぞ」
   おふくろ、帰ろう。傷が治ったら勝沼に帰ろう。
   秀治は心の中で叫んでいた。
   秀治はおかじを背負って、渡し場に急いだ。  

「海霧」
◯主な登場人物
 土屋禮治郎・多紀・奈加、
 土屋孫右衛門・土屋淳之介(淳堂)
 井沢重三郎
 勝蔵(岡っ引き)、白石源之助(北町奉行所定町廻り同心)
 春田友之助
 おゆい、おくみ、
◯あらすじ等
 八代藩藩士だった土屋禮治郎は、ある事情から不義密通をした妻多紀を成敗し、
 女敵討ちを誓い、井沢重三郎を追って国を出るが、ようやく行方を掴んだものの、
 重三郎は石川島の人足寄せ場送りとなってしまい・・・。
 苦節13年、その重三郎が赦免となって戻ってくる日が決まり、宿願の女敵討ちが
 叶う日が迫ったが、意外な展開となり・・・。

   禮治郎は、不安に震えているおゆいの顔を思い出して足を速めた。
   背を向けた海は、今まさに霧が晴れていくところだった。