図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「番神の梅(ばんじんのうめ」(徳間文庫)を読み終えた。

読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、ブログ・カテゴリー 「読書備忘録」に 書き留め置くことにしている。
▢目次
第一章 ~ 第十六章
解説・雨宮由希夫
▢主な登場人物
渡部鉄之助(桑名藩藩士・柏崎陣屋・公事退切)・紀久・鐐之進・八重・慎之介・りん
おゆき(八重の子守)、お弓(慎之介の子守)、おとき(産婆)
渡部久太夫(片山成美の弟、鉄之助の養父・叔父)・おまつ(鉄之助の養母)
佐藤代右衛門・もと(紀久の父母)、片山成美(鉄之助の実父・久太夫の兄)
粂蔵・おくら、弥助、
竹中連八郎・おみよ・おちか・伝(でん、連八郎の母親、おばさ)、
品川十四郎・登代・紋太郎、栗本作助・美津、
生田萬・お鎬(おこう)、
お信(おのぶ)・徳治・おるい・羽村、
おいね(柏崎の呉服屋「今井屋」の女房)、おみつ(旅籠「近江屋」の女将)
▢あらまし
舞台は、江戸時代、天保年間、桑名藩の飛び地(分領地)越後柏崎の陣屋。
桑名藩の下級藩士渡部鉄之助は、突然、勘定人として、柏崎陣屋赴任を命じられ、
幼い長男鐐之進を養父母渡部久太夫・おまつに預け、妻紀久と幼子八重と共に
赴くが・・・。
海鳴りと吹きすさぶ風、冬は雪に囲まれる僻遠の地柏崎陣屋赴任した者は、
島流しとも呼ばれ、二度と桑名に帰れることはないと言われており・・・。
さらに、清廉潔白四角四面の鉄之助の陣屋暮らしは、着物一枚買う余裕もない程
困窮を極める。
夫と子供のため日々の暮らしを守る紀久の心の拠りどころは、日蓮上人ゆかりの
番神堂に植えた、桑名から持参した梅の苗木だった。
この花が咲いたら故郷桑名に帰れる・・・・、そう信じて、ひたむきに生きる紀久
だったが・・・・、
雨宮由希夫氏の解説によると、
本書「番神の梅」は、桑名藩の下級武士が綴った、「桑名日記」、「柏崎日記」を
元にして、作者が独自の物語に構築した時代小説。
天保十年(1839年)に、久松松平家桑名藩の下級武士渡部勝之助が、突如、
勘定人として、越後の柏崎陣屋に赴任するよう命じられた。その時、すでに三歳の
長男鐐之助がいたが、養父渡部平太夫と協議し、鐐之助を桑名において赴任。
桑名と柏崎、遠く離れて暮らすことになった久太夫、鉄之助親子は、それぞれの
暮らしや家族の養子を、きめ細かく日記に綴り、ほぼ十年間に渡って交換していた
のだという。
本書の主人公渡部鉄之助は、その渡部勝之助をモデルにしており、実在した人物
勝之助の人生に沿って造形されている。
紀久もまた、実在した「きく」をモデルにしている。
重責と薄給、超多忙な鉄之助が、次第に壊れていく最愛の妻紀久にしてやれる
ことは、家事育児を担い、労いの言葉の掛けてやるしかない、歯がゆさと切な
さ・・・、
貧しくても、「凛として生きよ」と、実父佐藤代左衛門の遺言が届き・・・、
梅の木に帰郷の望みを託し、夫とわが子のために・・・、
ふりかかる試練に耐え、下級武士の妻として懸命に生きた女性紀久の生涯・・。
何と美しく、凛として、切ない物語である。
生きることの哀歓漂い、抒情性に溢れた彫りの深い人物造形に定評がある作者の
秀作の一つだと思う。
著者・藤原緋沙子 プロフィール

1947年、高知県生まれ、本名・藤原千津子、
2001年、立命館大学文学部史学科を卒業、
小松左京が主宰する創翔塾で学び、脚本家を経て、
2002年、「隅田川御用帳シリーズ」の第一巻「雁の宿」で小説家デビュー。
同シリーズで、2013年第二回歴史時代小説作家クラブのシリーズ賞を受賞。
人情時代小説の名手として、リアリティあふれる物語空間の創出、
意外性に満ちたストーリー、魅力的な人物造形などが高く評価されている。
文庫書下ろし時代小説で絶大な人気を得る。
主な作品に、「茶筅の旗」「番神の梅」「龍の袖」等、
また代表的なシリーズに、「藍染袴お匙帖」「隅田川御用帳」
「橋廻り同心・平七郎控」「見届け人秋月伊織事件帖」「浄瑠璃長屋春秋記」
「渡り用人片桐弦一郎控」「人情江戸彩時記」「千成屋お吟」
「切り絵図屋清七」「秘め事おたつ」「へんろ宿」等がある。