春夏秋冬、四季それぞれの自然の風景を楽しめる日本、
今は秋、晩秋の候である。
北海道等北の地方や 標高の高い山々からは すでに紅葉の季節が終わり 降雪の便りが届き始めているが
関東甲信越等の低山や平地では ちょうど紅葉黄葉の季節になっている。
「百人一首」の中には、「秋」を詠んだ歌が多いが、
四季の中でも、とりわけ秋の風景が、最も日本人の心情を映す季節だからかも知れない。
奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の
声聞く時ぞ 秋は悲しき
歌番号
5
作者
猿丸大夫(さるまるだゆう)
歌意
奥深い山の中で、
散り積もった紅葉葉を踏み分けて鳴いている鹿の声を聞く時に
ひとしお秋は悲しく感じられるものよ。
猿丸大夫は 平安時代初期の歌人で
三十六歌仙の一人とされているが
伝説上の人物で、生没年も未詳なのだそうだ。
(蛇足)
川柳に 「赤人の尻に猿丸きつい事」という句が有るが
「百人一首」の歌番号の順序で、
猿丸大夫の「奥山に・・・」の前に、
山部赤人の「田子の浦ゆ・・・」が有ることから、
「赤」の後に「猿」が付いていると皮肉ったものだという。
参照・引用
小野谷照彦著 解説本「小倉百人一首」(文英堂)