たけじいの残日雑記懐古控

「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」・日記風備忘雑記懐古録

藤原緋沙子著 「梅灯り」

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「梅灯り(うめあかり)」(祥伝社文庫)を読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」の第8弾の作品で、
「第一話 まぼろし」「第二話 報復
」「第三話 白雨の橋」の、連作短編3篇が収録されている。

「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、訳有りで、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)」とは、縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門で、それぞれの奉行所で、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。

 


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 まぼろし
・主な登場人物
 珍念
(千太)、お房、おみの(美野)・八田力蔵、
 寅吉、佐太郎、桂蘭、
 助五郎、菊太郎、竹五郎、
・あらすじ等
 「夢のなかでおっかさんに会ったんだ」・・・、幼い頃、母親に捨てられた少年僧・珍念が嬉し
 そうに話す。夢で再現された母との最後の場所は、梅の香が漂う橋の上だったと言う。
 二百数十ある橋を一つ一つ、梅の香をたよりに巡り歩く珍念。折しも殺しが発生、珍念も何者かに  
 拐かされ、
行方知れずに・・・・。事件の真相解明探索開始した、平七郎、秀太、辰吉、おこ
 う・・・、
 何か言おうとして珍念はぼろぼろと涙を零す。
 「似合っていますよ、珍念・・・、お房さんもあの世で祈ってる。珍念、幸せになりなさいっ
 て・・・」、おこうも目頭を押さえる。
 「そうだ、珍念、立派な坊さんになれ、お前ならなれる」、平七郎も珍念の前にまわって、
 肩に手を置いた。
 「平七郎殿・・・・」、母の里絵が袖口で目頭を押さえた。

「第二話 報復」
・主な登場人物
 伊勢蔵、伊助、孫六、おます、おさよ、
 小宮彦次郎
(北町奉行所同心)
 おくら、
 煙草問屋「越後屋」太兵衛・太一、おかよ
 薬種問屋「板倉屋」・お常、
 蝋燭問屋「小松屋」万五郎・宗助・お志乃、
 おたき、
 楠田宗之進
南町奉行所同心)、八田力蔵、
・あらすじ等
 弱みに付け込んで脅し、袖の下を取る、札付きの岡っ引き?と、決め込まれている伊勢蔵だった
 が・・・、実は・・・。

 「おます、伊助が手札を貰っていた同心の名はわかるか?」
 「忘れるもんですか。南の楠田宗之進という役人だ」
 ・・・・・・、
 「立花様・・・・」、太兵衛が沈んだ声をかけてきた。
 太兵衛は、目の先にある猿子橋をじいっと見詰めて、「あの夜、私はここで、伊助さんを
 見送りました。・・・・」、「・・・・」、「ところが、その橋を。今度は倅の伊勢蔵さんが
 渡ってきた。復讐の鬼になってね」

 平七郎は、けぶるように降る雨の中を、橋を渡っていく伊助の姿を見たように思った。

「第三話 白雨の橋」
・主な登場
 与七、お豊、金五郎、

 陶器屋「益子屋」治郎兵衛、
 呉服商「丸屋」甚兵衛・おたね、
 以蔵(桶職人)
 綿操問屋「山城屋」五兵衛、弥助、
 半次郎(ハン公)、堀川、
 「真砂屋」仁兵衛、綱蔵、
・あらすじ等
 喧嘩沙汰で破損させてしまった益子屋に、貯め込んでいた独立資金30両を損害弁償するはめに
 なり、一緒になるつもりだったお豊が行方不明に・・・・。気落ちする与七。その裏には隠された
 真相が・・・。平七郎、秀太、辰吉、おこうが、粘り強く探索、黒幕を暴き出すまで・・・。
 
「あっ、帰ってきました」、だるま長屋の大家金五郎は、木戸をくぐって来る与七の姿を
 捉えると、平七郎、おこうににこりとして、「与七さん」、

 与七は、小走りして近づくと、ぺこりと頭を下げ、「お陰様で新しく考案した袋も上々の
 売れ行きです」

 「よし、俺も貰おう。二つくれ」、ちらとおこうを見て言った。母親の里絵とおこうにと思って


(つづく)