図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「麦湯の女」(祥伝社文庫)を読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」の第9弾の作品で、
「第一話 彩雲」「第二話 麦湯の女」「第三話 迎え松」の、連作短編3篇が収録されている。
「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、訳有りで、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)」とは、縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門で、それぞれの奉行所で、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
「第一話 彩雲」
・主な登場人物
瀬尾鹿之助・美咲、
富山伊一郎(上野国黒金藩江戸留守居補佐約・丹波弥左衛門)、久世大和守重幸(上野国黒金藩藩主)
岩井欣吾(上野国黒金藩目付笹原勘解由の配下)
上村左馬之助、
甲州屋善右衛門、
八十吉
・あらすじ等
「我らは天に誓う。生きる道は違えども、死するその時まで、生涯友であることを願わん」、三国
志の名場面を模して誓い合った、かっての千葉道場の仲間の一人瀬尾鹿之助が、人殺しの容疑で捕
縛され、小伝馬町の牢で取り調べを受けていることを知った平七郎と左馬助、事件の真相を暴い
ていくが・・・、しかし・・・、
美咲殿、鹿之助の敵は俺が取る・・・・、震える美咲の肩に、平七郎は誓っていた。
「第二話 麦湯の女」(表題作)
・主な登場人物
お馬、
沢本富三郎(元甲府勤番旗本沢本勘右衛門の嫡男)、
十助(儀十)、
一色弥一郎・千恵・友之助、
おむら(煮売り屋)、
・あらすじ等
「命に代えても申しません」、奉行所が総力を上げて追う浪人、沢本富三郎の行方を庇うひたむき
な娘お馬。平七郎、どうする?
お馬は、本所・法恩寺橋袂で麦湯屋をやっている器量よしの娘。その娘に懸想し、捜査情報を漏ら
してしまう、なんとも哀れで滑稽、お粗末な、吟味方与力一色弥太郎の姿が有り・・・、
「それにしても、一色は・・・」
榊原奉行は苦笑すると、茶を喫した椀を置いて立ち上がった。「一色には、家に帰れを言って
やったよ。女房殿にも遠回しにもっと亭主を大事にしてやれとやんわりとな。もっともこれは、
奥が女房殿を呼びつけて言ってやったのだが、・・・・やれやれだ」
「第三話 迎え松」
・主な登場
栄治郎・おみつ・六兵衛・おしげ、
益三、伊助、
新八(竜神の新八・船宿清風)、鶴吉、竹蔵、
おふく、源治、
寿屋おつや、福富七太夫、
近江屋久兵衛、おひろ、山崎屋佐十郎、
・あらすじ等
親思い、妹思いの栄次郎をワルの道に走らせた、本当の理由は何だったか?。
栄治郎のために奔走する平七郎、秀太、おこう、辰吉、新八・・・・、
「板橋の迎え松か・・・」。歩きながら秀太がしみじみと言った。
幼い兄と妹が、松の木に腰かけて足をぶらぶらさせて父親の帰りをまっている。
遠き日のひとこまが目に見えるようだった。
(つづく)
(蛇足)
無料アプリ、AI「ChatGPT」に、
「自営業を完全に辞めてから、読書の習慣が身につき出している
80代の爺さんの姿を、描いてみて下さい」
とお願いしたところ、数分で、出来上がってきた。
とても、こんな、落ち着いて、かっこいい爺さんではないが、
イメージ的には、上手く描かれており、
うなってしまう。
近い将来、現実の自分の姿と、AIが作り出す仮想の姿が混在、
分けが分からなくなってしまうのではないかと、
不安を覚えてしまう。
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「読書する老人」